◆旧志村金物店「八百萬本舗」
金沢駅と主計町・ひがし茶屋街を繋ぐ線上に立地的にも街並み的にも魅力のある「尾張町~橋場町」エリアがあります。 ここは、藩政期から昭和初期にかけて金沢の商業の中心地だったエリアで、点在するように残る古い商家町家や洋館などが、このまちのかつての賑わいを想像させてくれます。
▲「尾張町~橋場町」界隈には今も古い商家町家や洋館などが点在
2015年「八百萬本舗」としてリノベーションされた物件は、そんな金沢のかつての中心地、橋場町交差点、浅野川大橋の近くにある町家「旧志村金物店」です。 この町家を残したいという物件オーナー、金沢らしい街並みを残しながら活用したいという事業主の思いが重なりあって「八百萬本舗」として生まれ変わることになりました。この建物が刻んできた歴史や物語、町家としての佇まいを残しながら、構造や機能を補強し、新旧が織り込まれた空間としてリノベーションされました。
▲物件オーナーの想いから、旧店舗の什器も多数再利用
企 画/有限会社E.N.N. 設計監理/studio KOZ.(E.N.N.)
造園設計/橋本建築造園設計 施 工/株式会社 長坂組
家具製作/工人 ロゴ意匠/田中聡美 平面意匠/株式会社 ボスコ
▲昭和時代初期の志村金物店(現八百萬本舗)。歴史の一部を切り取った当時の写真。志村金物店の元店主が働く姿も映っていて時代の大きな流れを感じる。
◆金沢市指定史跡 金沢城惣構跡
八百萬本舗内部には、金沢市の貴重な歴史遺産である「惣構(そうがまえ)」という城壁の一部が保存されています。
「惣構(そうがまえ)」とは、城下町を囲い込んだ金沢城の防御のための掘りや土居のことで、安土桃山時代から江戸時代初めに築かれました。金沢城下には、内・外二重の惣構が築かれ、こちらの東内惣構は、慶長4年(1599年)に二代藩主前田利長が作らせたといわれています。堀の城側には土を盛り上げて土居を築き、竹、松、ケヤキなどを植えていました。金沢の街中を歩くと、あちこちに坂道や水路を見つけることができます。惣構は斜面を利用して築かれ、坂道の下の水路として市内各所に残っているのです。時代の流れとともに、多くの土居は崩され、堀は埋め狭められてしまいましたが、現在でも一部は市民の生活の場にとけ込んで点在し、かけがえのない歴史遺産となっています。
(金沢市公式ホームページより一部抜粋)
▲金沢城を囲むようにして建設された長い惣構溝の全体像とその一部である八百萬本舗内の惣構の位置関係がわかるように古地図の複写を展示。現在という「時間」と現在地という「空間」の立ち位置が同時に確認できるのも楽しい。
(古地図は「延宝金沢地図」石川県立図書館の許可を得て使用しています。)
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八百萬本舗の店内では、史跡金沢惣構溝をライトアップ。
このように、八百萬本舗は、クラフト創造都市・金沢のなかで異彩を放ち、新たなエリアの可能性を感じさせる新しい場として2015年3月に開業いたしました。スタッフ共々、皆様のお越しを心よりお待ちしております。